こんにちは、DEAN & DELUCA福岡店の東です。9月というのにまだまだ暑い日が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
さぁ、9月の九州エリアのテーマは「豊後の味力」大分の初秋のうまいもんということで、毎日のように体温越えの暑さが続く7月下旬に大分のおいしいとその文化、そして新たなる発見を探しにシェフたちと大分県北部を中心に視察してきましたので、レポートさせていただきます。

まず最初に向かったのは、大分県宇佐市にある『おもとの丘ファーム』
まだまだ暑さが残っているだろう9月にサッパリとした食材を!ということで、全国生産量の95%以上が大分県産という大分県と言えばの「かぼす」を探ってきました。
カボス畑&かぼす.png 917.73 KB小高い丘の道を車でガタガタと登っていくと、ジリジリとした日差しの先にある広い敷地にかぼすの木がずらりと。11ヘクタール以上の農地が目の前に広がっています。車から降りてかぼすの木の近くに行くとおや?何だ?かぼすがうっすら白いぞ… その正体は石灰。有機JAS適合での減農薬栽培をしていますが、この石灰のアルカリを混ぜることで酸を中和させる働きが。それをひとつずつ手で収穫して綺麗に洗っていく作業が本当に大変なのだそうです。
露地栽培のかぼすは7月末から収穫が始まるそうで、伺った時期はまさに収穫の直前。私たちがよく目にする緑のかぼすは10月頃まで、その後には完熟した黄色いかぼすが採れるのだそう。黄色くなると酸がまろやかになり、ポン酢などにさらに適してくるとのこと。この日はかなりの炎天下でしたが、話を聞いてすでにお鍋が恋しくなりました(笑)
そして、午前中のほうがより水分量があり収穫に適しているという話がありました。しかし、伺った時は畑には人がいなくて… なんでも、カンカン照りの時はその水分が飛んでしまい蒸発してしまうのだとか。聞けば聞くほど自然相手の難しさを改めて感じました。
おもとさん.JPG 5.58 MB案内していただいた農場長池田さんと大村さんは、農場を始められて7年目くらい。木が大きくなるのに3〜4年はかかるとのことなので、今ちょうど軌道に乗り始めたくらいなのだそう。「現在は安心院にも農地を開拓中なんです」と笑顔で話してくれました。特産だからこその誇りあるチャレンジと熱い思いに、私の中ではちょっと脇役だったかぼすとしっかり向き合って、主役級になれるメニューを考えてもらわなければ… とシェフに熱い視線を送りました。

そして、次に安心院方面へ。
九州以外の方は「安心院(あじむ)」を見てもなかなか読めない方が多いようで、関西出身のエリアシェフもいつもこの字を目にするといったん止まって… 地名だよねと。
何をかくそう、安心院は日本で3番目に世界農業遺産に認定された地域。自然豊かで広大な宇佐平野と山間部にある2つの大きな川からできる風光明媚な盆地として有名なのです。そんな中でも「ぶどうのまち」として西日本有数の生産量を誇る安心院ぶどうは超有名。とあらば、早速ぶどうを探ってみようと『安心院葡萄酒工房』へ。
杜.JPG 7.69 MBこちらでは、盆地ならではの温度差の激しい気候を活かし、自社農園にて良質なぶどうを育て、安心院ぶどうのみで芳醇な赤・白・スパークリングワインを製造されています。
「杜のワイナリー」と書かれている看板のとおり、あたりは一面森の中。そう、ぶどうだったらワインを学ばなければと、敷地内のワイン工房へ。工房内では、出来上がったワインを瓶に詰める充填室やワインの醸造場、そしてワインの貯蔵庫が。圧巻だったのはその貯蔵庫。温度を保つために半地下に作られた貯蔵庫には多くのワイン樽がずらりと並べられていました。
地下たる.jpeg 1.62 MBこちらのスパークリングワインは、シャンパンと同じく瓶内二次発酵といわれる方法で製造。通常の方法で作られたワインをベースに、瓶の中で二度目の発酵を行い、炭酸ガスを瓶の中に閉じ込めます。発酵終了後に酵母を含んだまま1年以上じっくりと熟成し、ピュピトルという板に瓶を逆さまにかけ毎日少しずつ回転させて、約1ヶ月かけて、中の酵母を瓶の先に集めていくそうです。最後に冷凍機で瓶の先を凍らせ、栓を抜いて酵母を取り除き、コルクとワイヤーをかけて、スパークリングワインが完成します。
そういった一連の流れをしっかりと勉強しつつ外に出ると、工房の裏手には多くのぶどう畑があり、ちょうど果実がたくさん実っていました。これからおいしいワインになるんだろうなと思い、次に進んだのは待ちに待った?試飲コーナー!
タンク&ワイン売場.png 948.32 KB赤白泡10種類以上のワインを飲み比べすることができ、隣には物販コーナーも併設。試飲をお願いすると、まず出てきたのがスパークリングワイン。最初の1杯はスタッフに注いでいただき、まるでウェルカムドリンクのようで…
そのあとは各自好きなワインを順に試していきました。物販コーナーには、ノンアルコールのぶどうジュースなどもあり、おうちへのお土産やアルコールが苦手なメンバーは自分用にご購入。もちろん試飲して気に入ったワインを私も抜かりなく購入し、次の目的地へ向かいました。

次に向かったのは同じく安心院でぶどうを栽培している『たすくファーム』へ。
ハウス&選別.png 1.07 MB到着すると早速、ぶどうのハウスに案内していただきました。ハウスの中には「シャインマスカット」「ナガノパープル」「ピオーネ」などが袋に入ってずらりと敷き詰められて実っています。同じハウス内に3種類のぶどうを栽培されているのですが、それはぶどう狩りにくるお客様用。「色々な種類を見れた方が楽しいですから」と代表の後藤さんがお話ししてくれました。ただ、ピオーネは水分を吸収しやすく、シャインマスカットに合わせて水を撒くと水っぽくなってしまうので、水分量を見極めてそれぞれの品種に適した水撒きをしているのだそう。今から収穫をして、冬になると次は枝を切っていく作業に。枝を切って一度リセットすることで、また糖度がのって甘いぶどうができてくるのだとか。栽培や収穫の時期だけでなくそれに向けた準備も含めると、改めておいしいものを作るにはとても労力がかかるのだな、と痛感しました。
後藤さん.jpeg 3.03 MB直売所に戻り、梱包の作業などを見せてもらっていると、部屋の奥に何やら気になる機械が。中には乾燥中のドライぶどうがありました。出荷するには十分な甘さだけど形を揃えるために切りとってしまった部分や、こぼれてしまった実をなんとかできないか… と考えてドライフルーツを開発中。シェフたちも一緒になって「こういう加工をすれば…」「凍らせてみたりもしたんですけど…」「マスカットのあの色を活かすには…」などなどつくり手どうしのお話が止まりません。少しでもロスを減らせるように、少しでもおいしいものを届けられるように、様々な工夫をされている農家さんでした。

この時点で15時に迫ろうという時間。さすがにお腹がペコペコ… ということで別府市にある『とよ常』という大分の郷土料理が味わえる有名店へ。大分名物のとり天定食と一緒に選んだのは大分名物「りゅうきゅう」
「りゅうきゅう」とは地元で取れた新鮮なお魚を醤油や酒、みりん、ごまなどで和えた大分を代表する郷土料理。一種の保存食として大分に浸透しているそうなんですが、九州の定番居酒屋メニューのごまさばを食べ慣れている福岡出身メンバーは何処か馴染みのある味にほっこり。これはお酒が欲しくなる…と誘惑にかられながらとり天とりゅうきゅうをかきこむのでした。
パン屋.jpg 2.67 MBペコペコなお腹を満たして次に向かったのは昔なつかしい、趣きのある『友永パン屋』です。
なんと創業大正5年!レトロなストライプのひさしの下のガラス戸から見えるのはなんともレトロなパンがずらり。そしてお客様もずらり。面白いのは注文のシステムで、入り口にいる店員さんから伝票を渡されて自分で記入していくスタイル。珍しいねぇ… なんて話していたらどんどん次のお客様が来て列が伸びていきます。値段も手頃でどこかなつかしいパンを求めてやってくる、地元の方々から愛されているパン屋さんでした。

流れるようにパンを購入した私たちは、メンバーのひとりがすごく気になっていた「しいたけソフト」にチャレンジ。
しいたけソフト.jpeg 2.51 MBなんという気になりすぎるワード… お次はそのソフトクリームが食べられる、椎茸の直売『やまよし』へ。
到着してまず目に飛び込んできたのは、椎茸柄のペイントがされた入口。「かわいい!」とみんな連呼しながら中へと入りました。店内では椎茸の量り売りや出汁、佃煮などの加工品が販売されていました。
そしてカウンターでは気になっていた「しいたけソフト」が!見た目はふつうのソフトクリームですが、香りからほのかに椎茸がどこかにいるんだけど、恐る恐る食べてみると…「おいしい!」という声が続出。椎茸の風味や出汁の旨みなのか、ミルクと合わさってなんだかキャラメルのよう。
食材の組み合わせってやっぱり面白いよね、なんて話をしながら、最初はドキドキしながら食べていたメンバーも全員がペロリと完食する、とても大分らしいソフトクリームでした。

大分温泉県.jpg 1.51 MBこの他にも、可愛らしい看板が目印のパン屋さん『A:GOSSE』やホテルと雑貨屋さんが一緒になった『HAJIMARI』、地元の食材を使ったマフィンやスコーンがキラキラしていた『うみとじかん』などなど… 寄り道もたくさんしましたが(笑)あっという間の大分でした。今回はかぼすやぶどうなどの果実中心となりましたが、それぞれの農家の方々、それぞれの工房で少しずつ違った工夫がされていたり、逆に違うものを育てているのに気を付けている事は同じだったり、今回もとても学びのある食旅になったことは間違いありません。共通して感じたことは、どれも本当に手間暇かけて作られていて、その食材を使わせてもらえる事は本当にありがたく、また、いつもながら気の引き締まる思いでいっぱいになりました。

オーバル3種.JPG 2.71 MB九州ドリンク.JPG 823.95 KBさて、9月は「豊後の味力」
福岡店と博多店ではそんな大分の魅力たっぷりの食材を使ったお料理やベーカリー、そして加工品などといった豊後の味力が勢揃い!1か月間、今回の大分で感じた思いと新たなるおいしさの発見を丁寧に皆様にお届けしていきたいと思います。
まだ残暑ではありますが、ぜひ初秋の「豊後の味力」をたっぷりと味わいにいらしてください。