こんにちは、まだまだ暑い日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。DEAN & DELUCA 九州統括の宮崎です。
9月というのにこの暑さ!食のトレンドを追求しなければならない者としましては「初秋」にシフトしなければと思いつつ「涼しげな」「ひんやり」からまだ抜け出せないという、今日この頃です。
いや、そんなことも言ってられんばい! 9月のテーマは「豊後の味力」大分の初秋のうまいもんということで、毎日のように体温越えの暑さが続く7月下旬に大分の小さい秋とその食文化、そして新たなるうまいもんを探しにシェフたちと大分県日田市や中津市を中心に食旅に出かけました。

実は… 当時の日中は、39℃を超える熱帯気候で、生産者も畑に出ることができないくらいの暑さ。いつものように畑や収穫風景がお見せできないのが非常に残念ですが、つくり手の方々の思いはしっかり受け止めてきましたのでご了承くださいませ!

まず、車を走らせ最初に向かったのは、日田市大山町にある『森食品』『森梅園・農園』へ。森農園外.jpg 67.12 KB日田の山林を上り、細い路地を走った急な傾斜の山奥に『森食品』『森梅園・農園』があります。そこでお話を伺ったのは、『森食品』の代表、愛称たみちゃん。
地域活性化のモデルといわれた大分県の「一村一品運動」で、この大山町は梅や栗、柚子胡椒などの栽培を奨励しています。地域一体となって特産となった梅干しを栽培・加工・拡販と工夫をされているという、いろいろご苦労があったであろう経歴を元気いっぱいにたのしそうにお話してくださいました。
たみちゃんのところでは、梅干し加工・唐辛子の栽培から柚子胡椒の加工を主に行なっていますが、その商品がおいしい!たのしい!のなんの。アイデアがいっぱい詰め込まれていて「こういうのが食卓にあったら最高」というものばかり。梅干しをはじめ、柚子胡椒、ドレッシングやポン酢、たみちゃんシリーズで「鶏ごぼう味噌」「なめ茸ゆずこしょう」「梅しょうが」などのご飯のお供まで… 自然な風味たっぷり、食べていてたのしいし、どこか懐かしさも感じられるものばかりでした。
梅干し作り.JPG 2.95 MBさて、「一村一品運動」とは1980年ごろから大分県で始まったプロジェクト。地域活性化のために環境を保全しながら地域にある資源を生かして発展させ、自主自立、創意工夫をしながら、地域資源を掘り出して特産物とし、更にブランド化して地域経済を活性、それを生み出す環境を維持して共生するまちづくりをしていこうという運動。「一村一品運動」から生まれた大分の代表的な特産物は、関サバ・関アジ・かぼす等々… 今では、大分県がすぐに頭に浮かぶくらいの名産品ですよね。
たみちゃん.JPG 3.22 MBそして、たみちゃんから「昔だけど、この村でハワイに行ったのは私が初めてじゃないとかな」とハテナな発言。
実は、更にその昔の1961年に大山町では「NPC運動(New Plum and Chestnuts)」が発足。「梅、栗を植えてハワイへ行こう!」のキャッチフレーズで、耕地農業から里山に適した梅と栗を中心とした果樹農業への転換を目指し、農家所得の向上と大山町の地域経済を活性化したという、なんともその当時では画期的で生産者の未来を見据えた運動!大山町の歴史、おいしいものを届けたいという生産者の思い。人生の大先輩、たみちゃんの話にたくさんのパワーをいただいた貴重な時間でした。

梅の木.jpg 3.37 MB次に少し山を登ったところに、たみちゃん繋がりの『森梅園・農園』へ案内してもらいました。たみちゃんが加工している梅干しの梅を栽培している『森梅園・農園』は、9品種の梅の木を1,000本育てています。年間生産量30トン、もちろん手作業です。こちらも「NPC運動」での提唱を受け、麻の栽培から梅農家へと転身され60年。今や「全国梅コンクール」で何度も最優秀賞を受賞するほどに大分の特産として評価されています。
しかし、高齢化が進むにつれて独自の栽培技術の承継で厳しい問題にぶつかりご苦労が絶えなかったといいます。
梅干し.JPG 2.38 MBこの地域では、高齢化で承継や引継ぎが深刻な問題になっているなか、地元商工会の取り組みである「事業承継計画」というものが、商工会全面協力のもと事業承継計画書の策定を支援することを駆使しており、その制度を活用して森さんの娘、あゆみさんが「事業承継」を決意されました。
森さん.JPG 1.63 MB独自技術による栽培で「町内一」と言われるほどの梅農家のお父さん。自家製堆肥での土づくりや低農薬、最も承継が難しいのが梅の木の剪定。木の年代によって異なり、剪定によって翌年の梅の出来が違ってくるし、梅干しの味にも影響するという。「女手では剪定技術を学ぶのは難しいだろう」と、自身の体が言うことをきかなくなったら廃業することも頭をよぎったというお父さん。剪定は1日10本くらいしかできないので、1,000本の剪定をするには3~4カ月はかかるという大変さも、2年の事業承継計画とあゆみさんの断固とした決意が届き、お父さんは娘に引き継ぐことに同意されたんだとか。実は、たみちゃんのところもこの制度を活用して、今や娘さんがたみちゃんをプロデュースしているほど(笑)
ume.JPG 2.92 MBいつも生産物に特化して、こだわりや技術に着目してきましたが、地域一体となった、行政との取り組みやつくり手の未来、地域の在り方、地方創生、まさに自然と人による「農業革命」が昔から行われてきたんだなと、つくり手の熱いお話に全員が心打たれました。

そして、次はお待ちかねのランチに。
中津市にある『火水風土(カミフード)』は、自然栽培で米・麦・大豆を栽培しています。自家培養した光合成細菌を使って肥毒を出し、本来の自然の土壌に戻して作物を育てる、といった徹底した管理と栽培。奥さまの経営するカフェの棚には、光合成細菌をいれた瓶が何本も。しかもなんかオシャレ!
カフェ店内.jpg 87.95 KBそうめんうどん.JPG 3.23 MBカフェの空間も木のぬくもりが感じられて、阿部さんの話を聞きながら自然栽培でつくられたうどん膳を食べることに。
小麦粉もおにぎりもつけ汁も全て自然栽培。デザートのワッフルもジンジャードリンクも素材そのものの風味がしっかり感じられて、素朴だけど噛みしめた後の芳ばしさや旨みが伝わってくる贅沢なランチでした。
ランチ.JPG 3.34 MB「大切なのは、自然を支配しようとせず、寄り添い、お世話をし、任せることです」というのが、阿部さんのストレートな思い。時には、田植えをイベント化し、田んぼの周りではバンドが演奏するという、おもしろいイベントも開催しているとか。とにかく自然に浸かった、難しいことを考えさせないナチュラルなお話とこの炎天下にもってこい、身体に優しいランチを存分にたのしみました。

からあげ.jpg 1.54 MBそして、中津といえばソウルフードの「中津からあげ」
中津市は「からあげの聖地」 これを食べなきゃ後悔するでしょ、ということで『もり山 本店』へ一目散。道を挟んだ駐車場なのに芳ばしい香りがプンプンで、自然に浄化されたのも束の間、からあげに首ったけ。帰りの車で食べようと手羽やもも、むね、砂ずり、などなどを購入。ニンニクを効かせた辛めの味付けで醤油ベースのタレが染み込み、外はカリッ中はジューシー、いわゆる間違いないおいしさ!はい、車の中は、からあげフレーバーで充満。頭も心もお腹も満たされて福岡へ帰っていきました。

PKF集合.JPG 1.89 MB今回の大分食旅は、本当に暑い中で土や木、素材に実際に触れることはできませんでしたが、「食の共創」という大きな目線での学びや体験がたくさんあったように思います。地域を愛し、地域が一体となって経済をまわし、生活や生業を持続させていく。決して簡単なことじゃないと思いますが、これほどまでに素敵なつくり手とおいしい食に出会える。知ってよかった、本当にありがたいことだと実感しました。
私たちはそんな地域文化の魅力、ストーリー、おいしさをしっかりとカタチにして、地域文化に利益をきちんと還元できるように伝えていかなければと思います。

オーバル3種明るい.JPG 2.3 MB弁当.JPG 1.82 MBさて、9月は「豊後の味力」
福岡店と博多店では、今回出会えた食材はもちろん、大分のうまいもんを使ったお料理やベーカリー、そして加工品などといった豊後の味力が勢揃い!1カ月間、今回の大分で感じた思いと新たなおいしさの発見を丁寧に皆さまへお届けしていきたいと思います。
まだまだ暑い毎日ではありますが、ぜひ「豊後の味力」をたっぷりと味わって初秋を先取りしちゃってください。

おまけ…
途中立ち寄った大山町農業協同組合の直売所『木の花ガルテン』でうまいもん発見!
鮮やかな山椒がミルに入っていて。もうひとつは岩塩も一緒に。これ、絶対香りがたまらないはず!!早速購入してお料理に… シェフ「これ、ええやん」天井を見つめそうな勢いで(笑)おいしさ確信。実は、シェフがお世話になっている生産者だったから話が早い。生産量が少なくて、あまり市場に出まわっていないけどシェフの頼みならと今月より販売できることに。上品な香りとお料理のアクセントにぜひお試しください。
日田山椒.jpg 3.26 MB「ひた山椒 」¥1,404(税込)「ひたロック山椒 」¥1,080(税込)  ※なくなり次第終了です。