こんにちは、DEAN & DELUCA 福岡店の井本です。
穏やかな陽気と初夏をも思わせる日差しがまぶしい6月のテーマは「糸島」
ご存知の方も多いかと思いますが、糸島は、玄界灘に面した美しい海岸線、深緑の山々など豊かな自然に恵まれ、漁業や農業、畜産も盛んに行われている言わば食材の宝庫!そして、海辺にはおしゃれなカフェもあり、海岸では海水浴やサーフィン、魚釣り、ドライブやゴルフ、登山など大自然を最大に満喫できる人気の街。夏には海風を感じながらの野外音楽フェスも開催されたりと、そんな魅力がいっぱいの糸島をシェフ達と巡り、またまた素敵な農家さんたちとの出会いと学びがたくさんありましたのでご紹介させていただきます。
まず、最初に向かったのは西区宇柳で約10種類のカラフルトマトを栽培している『Tomato Farm西農園』へ。
さっそくハウスに案内され、目に入ったのは、小振りだけど瑞々しいふっくらした可愛らしいトマトがたくさん!『西農園』では赤や黄色、オレンジ、緑、紫、珍しい色や形のトマトたちを栽培しており、品種によってそれぞれ育て方を変えているんだとか。カラフルなトマトたちは、見た目の色の違いはもちろん、果肉がしっかりしているもの、甘味が強いもの、酸味があるもの、みずみずしいもの、味の特徴も様々。同じ土で何種類も栽培しようとすると全てが同じ味になり、せっかくのそれぞれの品種の特徴や違いが現れないので、品種に合わせた環境づくりにこだわって丁寧に育てているんだそう。約10品目のトマトの中からいくつか味見をさせてもらい、食べ比べを!
まずは赤色「フルティカ」をパクリ。
食べてみると、とっても甘い!!真っ赤な中玉サイズのフルティカはフルーツトマトのように甘味が強く、皮が薄くて滑らかな果肉と瑞々しさが特徴。ハウスの中でも日光が当たりやすい場所で、与える水分量も多めに育てています。
次に紫色の「トスカーナバイオレット」を。
見た目は葡萄のように綺麗な紫色。食べてみると皮が一段と美味しい!果肉はしっかりとした酸味、紫色の皮にも旨味が詰まっています。ハウスの中でも少し日陰よりのところで育てていますが、日陰は湿気が多く果実に結露がつき病気になりやすいため、ファンを回して結露を防止したり、毎日果実の状態を観察して与える水分量を調節したりと、丁寧な作業を繰り返しして手間をかけています。
紫トマトの近くで育てられていたのは、緑色の「みどりちゃん」
みどりちゃんは特に暑いのがイヤな子だそうで。夏場気温が35℃を超えると、トマトにストレスがかかってしまうのでハウス内での温度管理もこまめに行っているそうです。
カラフルトマトはこのように品種によって育て方がバラバラなのでそれがとても大変で栽培を辞めてしまう農家さんも多いようですが、西さんにそれでも続けられている理由をお伺いすると「待っているお客様がいるから」とのこと。以前糸島のカフェの前で移動販売を行ったことがあるようで、そのときのお客様に「また来ます!」「待ってます!」というお声をいただけるようになって、「辞めるわけにはいかない」と続けたい気持ちが強くなったそうです。
期待してくれているお客様のために、お客様が色とりどりのトマトをたのしそうに選んでくれている反応が嬉しく、新たな品種の栽培にもチャレンジしていきたいと仰っていました。また、手作りした肥料を使ったり、ほとんど農薬を使わないようにしたりとお子様にも安心して食べてもらえるように、それぞれの果実がもつポテンシャルを最大限にひきだすことと、「お客様のために」を原動力に… お話を聞いているだけで元気をもらえる素敵な笑顔の西さんでした。
続いて向かったのは、糸島市泊で無農薬のパッションフルーツを栽培している『宮本農園』
パッションフルーツといったら南国のような暑い気候で育つイメージですが、福岡のなかでも海や山があってどちらかというと涼しい気候の糸島でパッションフルーツ?と車内で話していた私たち。ハウスに到着するとハウスの中の気温はまるで南国!?パッションフルーツはもちろん、傍らにはドラゴンフルーツやアロエも一緒に育てていました。もともとは、九州大学と糸島市の企画で観光農園をつくろうというお話を受け、他には無い収穫体験ができるようにと始めたのがきっかけ。
ハウスの中を歩いていると、ちらほらと白と紫の入った美しい花が咲いてるのが目に入りました。
このお花が朝10時半に咲き、そこから花粉がでて、宮本さんが毎朝ひとつひとつ手作業で筆を使って受粉の手伝いをしているそう。この季節は1日に1,000個分を受粉させ、実がついたら夏ごろには収穫予定。それが終わると秋頃にも花が咲くのでまた受粉させ、3月頃に収穫をする、という実は夏だけでなく1年を通して大忙しのパッションフルーツ栽培。熟したパッションフルーツは自然に地面に落ちるので、それを拾っていきながらひたすらと収穫するそうです。「パッションフルーツの皮は硬いので、落ちても割れたりはしないんですよ」と驚き。
採れたてパッションフルーツを切っていただき、いざ実食。割ってみるととても鮮やかな色!2つの果実の食べ比べをさせていただきましたが、まだ少し青みのあるものは酸味が強く、しっかり熟してくると甘みも増して風味も良くなるとのこと。その場で採れたてのものをスプーンですくいながら食べられる贅沢を噛みしめて、果肉の旨みと種のプチプチ食感を味わせていただきました。
またお隣のハウスでは「くりゆたか」というホクホクの食感が特徴のかぼちゃを栽培していて、大きな葉っぱが大胆で青々と立派に育っている「くりゆたか」は、他のかぼちゃとは違い少し早めの夏頃が収穫期。一般的に出回る時期よりも一足早めにお客様に届けられるように、収穫時期をずらしていることにこだわっているそうです。ご苦労の中、ハウス栽培内の気温管理を徹底しているからこそ出来る方法。地元で人気の市場『伊都菜彩』に出品するとすぐに完売してしまうのだとか。濃いオレンジ色で甘味も強い「くりゆたか」、ぜひ次の機会に食べてみたいものです。
次は、糸島市二丈で甘夏を栽培されている『わかまつ農園』へ。まずは、若松さんにどんな想いで育てているのかお話しを伺いました。
糸島の甘夏は、海沿いで育てることで海のミネラルが豊富に含まれていて、瑞々しい果実に仕上がるのが特徴。若松さんは無農薬で育てることにもこだわっていますが、お話の中でとても印象的だったのは、肥料に牡蠣殻を使用していること。糸島といえば、プリップリの牡蠣が有名で冬の牡蠣小屋は特に地元民にも大人気!その牡蠣の殻を使った肥料と、糸島の海と。栄養剤など調べて外部から取り寄せるということは一切せずに、もともとからこの土地にあるもので、出来る範囲で。自然に任せた栽培方法にこだわっているというお話がとても魅力的でした。
さっそく、実際の甘夏農場へ行くためにトラックで山の上に向かいます。まだ上、もっと上、どんどん山の上に進み、到着すると… 見渡す限りの大自然!!!絶景です!
これは糸島の海と山の栄養をしっかりと受けられる、糸島だからこその環境。若松さんはこの恵まれた大自然の中に、いつかサウナも作りたい!と目をキラキラさせて仰っていました(笑)もうひとつのこだわりとして、人間の生活リズムに合わせた収穫ではなく果実のリズムに合わせて収穫をすること。糸島の自然の魅力がたっぷり詰まった甘夏は、この環境でしか作れない、若松さんの想いがあるからこその「糸島の味」が実るのだと感じました。
そして最後に向かったのは、パクチーを栽培されている『MURA FARM』
案内していただいたのはパクチーハウス。ふわっとパクチーのいい香りが漂います。まず外観で特徴的だったのは、ビニールハウスに被さる遮光ネット。パクチーは熱に弱いので太陽光を50%カットして涼しい環境で育てるようにしているのだそう。ハウスの中を見せていただくと、こまかく仕切られた土から芽が生えています。これは、大きな畑にタネを直撒きすると発芽率が低くなってしまうので、ひとつひとつ苗を作って育ててから畑に移植して発芽させるという、手間ひまをかけた丁寧な栽培方法。また、土づくりにこだわり、肥料には糸島豚の尿を使った「生物活性水」というミネラルの多い水分を含んだ糸島の土地に特化した肥料。糸島のキレイな地下水や自然由来の肥料を使って、この環境のなかから無理せずに出来ることを。そして置かれている状況の中で持続可能で安定的に栽培できるようにすることを大切にされていました。先程の若松さんと同じように、ありのままの自然を第一に想う考え方が糸島でつくる自然の味を引き出しているのだと感じました。
ふんわりと柔らかい葉っぱが可愛らしいパクチーをいざ実食。食べてみると、パクチーの刺激的な苦味が抑えられていてやさしい味わいが爽やかに鼻から抜けていきます。大村さんによると「パクチーが嫌いな人も、ここのだったら食べれる!って人も多いんですよ」とニッコリお話してくれました。少しでも多くの人に食べてもらいたいという想いから育ったまろやか風味のパクチーを、パクチー嫌いの人にこそ一度食べてもらいたいなと思いました。
どのつくり手も共通しているのは「糸島」の土地ならではの育て方をしているということ。糸島の恵まれた自然を活かしながら、そこに自分たちのこだわりや熱い想いをのせ、丁寧に、真心込めて育てていることを知ることができました。糸島だからこそ出来る方法で… というつくり手たちの糸島への愛情も感じられ、こういった素敵な土地柄と魅力的な方々がいてくれるからこそ、糸島が食の宝庫であるのだと改めて実感しました。
6月の福岡店と博多店では、そんな糸島の旬の食材をふんだんに使ったお料理やベーカリー、加工品などが店頭に並びます。今回出会ったつくり手の食材を使って、シェフがとても素敵な商品を考案してくれました。実際にお話をきいて学んだことと、つくり手のたくさんの想いを商品にのせて1ヶ月間大切にお客様に届けていきます。皆さま、ぜひお店にお立ち寄りください!
また6月中旬には、採れたての糸島野菜や加工品が天神駅チカでお買いものができるマルシェを開催。直接つくり手に食材のお話を聞ける貴重な機会ですので、ぜひ福岡へお越しの際は、糸島のお気に入りを一緒に見つけてください。
「ITOSHIMA Marches d'été」
開催日時:6月15日(土)、16日(日) 各日11:00-17:00
開催店舗:DEAN & DELUCA福岡店
出展予定アーティザン : Tomato Farm西農園 / わかまつ農園 / MURA FARM / John Lemon / 泉屋六治 / ナガミツファーム 他
おまけに…
福岡店の九州マーケットでも展開している糸島市浦志の『COFFEE UNIDOS』にちょっと寄り道。外観は大きなガラス張りでおしゃれな雰囲気。店内では大きな焙煎機があり、コーヒーの麻袋がたくさん。種類豊富でどれにしようか迷ってしまいますが、テイスティング用のコーヒーも並んでいて吟味できるという有難さ。産地や生産者の情報もラベルに記載があるので、それを見ながら試飲ができるのも素敵なポイントでした。
私が気になったのは、「カスカラ」という、完熟したコーヒーの果実の皮を乾燥させたものからつくられたコーヒー。紅茶のようなフルーティーさや甘さも感じられ、甘酸っぱい味わいです。カスカラには、抗酸化作用がありお肌にも良いのだとか。そのままでももちろん、ミルクを加えてチャイのようにたのしめますと教えていただきました。
テイクアウトのコーヒーも販売しているので、糸島にお越しの際はぜひ立ち寄ってみてくださいね!