こんにちは、DEAN & DELUCA 九州統括の宮崎です。梅雨も間近のジメ―ッとした季節、皆さまはどのようにお過ごしでしょうか。福岡も今年の夏は灼熱であろうと思わせるようなフライングでの暑さがすでにじんわりと…しかし、からりと陽射しがまぶしく風が清々しい合間もありで…さてこの夏はどんなおいしいものを食べようか、合わせるお酒は何にしようか、そんなことばかりを考えている今日この頃です。
そんな時、「宮崎さん、6月のシーズナルテーマは筑後ですよ」と。おっと、こうしちゃいられない。筑後といえば久留米市や柳川市、うきは市といった有名所が集い、豊かな自然や肥沃な土地、筑後川の恵まれた水、古くから農業が盛んであり全国でもトップクラスの農業先進地。地場産業や伝統工芸等の多様な魅力に満ち溢れた地域でもあるのです。今回も歴史が深く、個性たっぷりの「筑後」のつくり手さんをシェフ達と一緒に訪れました。

先ず、最初に向かったのは、うきは市。暖かい気候と筑後川の豊かな水が小麦の生育に適しており、小麦の生産量が多い地域としても知られているうきはには、地元の食材を使ったパンやうどん屋さんも多く、冒頭画像の『ぱんのもっか』は、いつも行列の絶えない人気のお店。もちろんおいしいパンにも目がない私たちは、芳ばしい香りにつられて入店!全員がこれでもかというくらい、たくさんの可愛らしいパンをお買い上げです。

長尾➀.png 910.22 KBそして、パン屋さんから町屋や土蔵が連続する町並みを少し歩くと、『長尾製麺』が見えてきます。200年以上続く老舗製麺所なだけに趣のある建物がうきはの空気と交わり合いタイムスリップしたかのような感覚に驚いていたところ、素敵な笑顔で7代目長尾さんがお出迎えしてくれました。
早速、大正時代の元市役所だったという昔懐かしい建物(工場)の中に案内され、目に入ったのはまさに打ち粉で丁寧に一本一本延ばされている「吉井素麺」。年季の入った道具を使いながら職人さんの絶妙な手さばきに全員が魅入ってしまいました。手延べ素麺は、小麦を練って素麺の形に細く伸ばすため、油を使用するのが一般的ですが、長尾製麺では使いません。小麦粉本来の味を引き出すため熟成の時間を十分に3日間かけるのだそう。「素麺を食べるということは、水を食べるということなんだよ。」と長尾さん。豊富な地下水を利用して江戸の中期より水車製粉による手造りの麺づくりをモットーに、より職人の技術が必要だと熱く語られていました。
長尾➁.png 860.54 KB又、伝統ある商品のほかに「ラーメン仮面」などの斬新で遊び心満載の商品の誕生秘話や昨今の消費者の食への関心や学び方についての熱心なお話に私たちも夢中に。「良い職人を目指すためにはその道一筋であることも必須だけど、その反面、自由人であることも大切。自由な一面が、職人である自分に大切なことを気づかせてくれるんです。」
長尾さん自身がまさに、こだわりの職人と、チャーミングな自由人を併せ持った方。2つの顔があるからこそ、こんなにおいしい素麺ができるのだと実感しました。

DSC_0349.jpg 2.82 MB続いて、農業や果樹栽培が盛んで豊かな自然に恵まれた風光明媚な朝倉市へ。今回訪れるのは、『さちまる農園』。就農されて5年と思えないほど、パワフルで研究熱心なご夫婦が手間暇かけて多種にわたる野菜を農薬や化学肥料を使わず丁寧に育て上げています。育苗期間が長く手間がかかることから種から育てることを嫌がる農家さんもいる中で、さちまるさんは「種を植え、目が出るまで時間もコストもかかり実は大変なんですけど、毎日いつかいつかと待っている気持ちと芽が出た時の感動がいいんです」とチャレンジを欠かすことがないそう。
満点な笑顔のさちまるさん夫婦の真っ直ぐな思いが込められ、そんな人柄を肥料に大切に育てられた野菜たち。その場でひっこ抜いたニンニクといったら、瑞々しくて艶やかで香りも柔らか…思わずかじりそうになるくらい!トマトもさやえんどうも、キュウリも、ニンジンも。シェフの頭の中はきっとワクワクが止まらないといったところでしょうか。
さちまる➁.png 856.38 KB野菜たちが強くたくましく育ってくれるように、植物生理をよく学び、微生物の力を借りて、力強い土作りをすること。食べておいしく、体が喜ぶ野菜を、みなさんが毎日食べれられる価格で提供できること。さちまるさんのチェレンジ精神は私たちも見習わないと…ほんと学びは終わりませんね。

そして次に向かったのは、焼き鳥や豚骨ラーメン、せーこちゃんやチェックのグループを輩出した有名所の久留米市へ。なんと言ってもわたくしの故郷でもある久留米。なんとも特別な感情が湧き出てしまい、車の中は同じ福岡人でも翻訳が必要なくらいの久留米弁が炸裂!どんこんこんこんされんっちゃんねー(どうもこうもできないのよねー)
マルコ.png 867.55 KBそんな賑やかな中、到着したのは昨年もたくさんの大きなとうもろこしでお世話になった『MARUKO FARM』に。車で移動する程のおおきな畑に見渡すかぎりのとうもろこしが。毎年6月にはスイートコーンの収穫祭があり、地元の多くの方々が利用しているそうで、特にお子さまは喜んで畑を駆け廻ってとうもろこしを嬉しそうに抱えているそう。
訪れた時期は4月末だったため、まだ腰までの高さでしたが、5月末には私の背丈以上に葉が育ち、生でも食べられるくらい粒がやわらかく、食べた瞬間その甘さにびっくりする…あのとうもろこしにまた会えるのですね。今年は、ビールにぴったりなバター醤油が芳ばしい「とうもろこしのフリット」のメニューがショーケースに並びます。

そして、筑後川沿いを走りDEAN & DELUCAでもお馴染みの『ならはら菜園』へ。ならはらさんの育てるカリーノケールとパクチー、冬はレッドビーツやわさび菜等、定番のメニューからシーズナルのスペシャルメニューまで大活躍。動物性堆肥・化学肥料を使わない土づくりにとことんこだわり、とにかく新鮮で栄養価の高い野菜たちは、味わいが濃厚で清涼感たっぷり。優しい甘さと香りがずっと食べていたいと感じさせてくれます。野菜ソムリエや食育マイスターの資格を保有し、おいしい野菜を追求し続けるならはらさんの情熱は、料理人と伝え手の私たちの心にもしっかりと響いています。
そして送ってくれる段ボールを開くと、毎回ラブレターが…なんと感動的なんでしょう。いつもありがとうございます!
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そして、久留米は酒都だということも忘れちゃいかんばい!
豊かな水源と上質な米が揃うことで、日本有数の酒蔵数を誇る地域としても有名な久留米。最後にここだけはと、100年の歴史を重ねる蔵元『杜の蔵』へ。杜の蔵さんでは、「一番贅沢に造った筈の大吟醸酒に、どうしてわざわざ他のものが入るのか?」と製造量の全てが醸造アルコールなどを使わない純米酒でつくられています。純米酒こそ本来の在るべき姿だと信じて情熱を傾けて。旨い酒は造るものではなく、慈しみながら育むもの。伝統を大切にしながらも、新しい息吹を求め、おいしいお酒を究め続けたいという心が蔵の雰囲気にも造られたお酒にも現れ出ています。
深く沁みいるようなしっとりとした上品な香味の「独楽蔵」は私のお気に入りの純米酒。ワイン通が好んで手に取る熟成酒としても知られていて、伝統製法がもたらす深さを冷でも燗でもお料理とじっくりたのしめる日本酒です。
DSC_0417.JPG 3.37 MB静けささえ感じるドシッと重みがある酒蔵には、母屋を改装した離れがあり、試飲を楽しめるスペースも。敷地内には弓道場があり、社長の祖父と曽祖父は弓道の最高位である10段だったというから驚き!
芯の通った凛とした味わいはこの技からも伝えられているのですね。
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最後に…
ちっご(地元では筑後のことを、ちっごと言う)には、まだまだ魅力あるヒトと食、そしてストーリーがたくさんあります。若い頃は都会にあこがれ、田舎から出たくてしょうがないという気持ちが大きく、故郷をじっくり顧みなかった私ですが…歴史・土地性を紐解き、地域文化を担っている方々と対話し、素材が生まれる背景を掘り下げると「感動と繋げる」ということを改めて思い直したと同時に、それぞれの独自のこだわりや熱い思いをしっかりと商品にのせて、皆さまへ伝えていくことを存分にたのしみたいなと思いました。
今回ご紹介できなかったところもまだまだたくさんありますが、ひろせ食堂に日吉丸、五十番に久留米荘…(全部久留米の有名店たい)ぜひ福岡へお越しの際は少し足を延ばして、ちっごへお出かけしてみませんか。奥が深くうまいもんだらけのちっごをちかっぱたのしまんねねー(チカラいっぱいたのしんでね)

PKF.JPG 2.06 MBPPF.JPG 3.25 MB6月の福岡店と博多店では、そんな筑後の旬の食材をふんだんに使ったお料理やベーカリー、そして伝統とこだわりが詰まった加工品が店頭に並びます。
中旬には筑後の採れたて野菜や加工品が天神駅チカでお買いものができるマルシェも開催。アーティザンに商品のこだわりや調理法などを直接聞いて筑後のお気に入りを見つけてください。

「CHIKUGO Marches d'été」
開催日時:6月17日(土)、18日(日)    各日11:00-17:00
開催店舗:DEAN & DELUCA 福岡店
出展予定アーティザン  : 酢造発酵場SU / KAWAKATSU FARM / MARUKO FARM / ならはら菜園 / いのうえファーム / さちまる農園 / 高木茶園