明けましておめでとうございます。DEAN & DELUCA 福岡店の東です。
年末年始からバタバタとしておりますが、七草・極寒の3連休・成人式もおわり、店内はバレンタインの可愛らしい商品が並び始めています。
さて、九州エリアの2月のテーマは、毎年人気がある「ちっごの恵み」。ということで、筑後のうまいもんを探すべく、少しずつ寒くなり始めた11月下旬に福岡県筑後地方をシェフたちと巡ってきました。その様子をレポートさせていただきます。
まずは腹ごしらえということで、もう筑後視察おなじみ!? うきは市『ぱんのもっか』で朝ごはんならぬ朝ごパンを。10時前にお店に着きましたが駐車場はほぼ満車。入れ替わり車がどんどん入ってきて、なんと自転車で観光しているらしき外国人も!人気ぶりが伺えます…
パン屋さんに行くといつも買いすぎるマネージャーとベーカリースーシェフ、相変わらず袋パンパンのベーカリーを持っていざ視察のスタートです。
まず伺ったのは、うきは市吉井町『酢発酵醸造所SU』へ。長くお付き合いさせていただいているつくり手ですが、改めての訪問。可愛らしいクラフト感のある店構えと華やかな果実酢が私たちを迎えてくれました。
今回は、奥さまからイラストと写真を使って果実酢ができるまでを分かりやすく説明していただき、ほんわかな空気に。なんと、果実酢の基本のつくり方はワインビネガーと同じだそうで、日本酒の701号菌を使ってつくるそうなんです。
果実の皮や種をとって、潰して下処理をし、その後に酵母菌を入れる。ブドウやリンゴに関しては果物の糖分のみを使用。イチゴなどの果物自体に糖分が少ない場合は果糖を混ぜつつ、ワインをつくるようにまずはアルコールにしていきます。毎日の「混ぜる」という工程では空気の触れないところから発酵が始まり、内側から発酵していくため中から泡がフツフツとでてくるんだそう。泡が収まると発酵が終わった合図。
泡が収まると果実などが底に落ちて、上部に澄んだ液が残った状態になったら酢酸菌を入れていきます。甘ければ甘いほど逆に酸っぱいお酢にできあがるとか。面白い変化に一同「へぇ~!」と頷きがとまりません。
発酵が終わったらもろみの袋に入れてゆっくり絞り、絞った透明なお酢を熟成させていきます。絞った殻は酒粕みたいだけど何にも使えない(酸っぱい)ので、最後はご近所の農家さんに野菜の肥料に混ぜてもらっているとのこと。地域の繋がりがしっかりあるからこそのルーティーンだと感じました。
おなかすいたね… と話しながら向かったのは、SUさんから車で10分程の『麺屋こばやし』に。
うきは市の住宅街の中にある、明治43年から続く老舗の製麺所の『小林製麺』。そちらが営業している直営店に伺いました。倉庫を改装した店内は天井が高く広々。壁にはおすすめの食べ方やメニューの紹介が書かれていて見ているうちにそれぞれ頼んだものが運ばれてきました。
定番のごぼう天うどんや生姜うどん、釜玉うどんなど… おいしいお出汁ともっちりとしたコシのあるうどんをふぅふぅと、ほっこりお腹を満たしました。テイクアウトにトマトラーメンとレモンラーメンをシェフにおねだり(笑)
次に向かったのは、朝倉市の『川茸元祖 遠藤金川堂』
金川堂は「黄金川」からつけられた名前で、黄金川は水前寺海苔が自生している川の名前。「あさくら水の回廊」と言われる黄金川は、絶滅危惧種指定の水生植物が生息し、初夏にはホタルでいっぱいになるくらい綺麗な川。なんと野生のクレソンも自生しているという、透明感があるとても清らかな川です。湧水の川で水温は年間で18〜23℃くらいに安定しているそう。
早速、川に生えている水前寺海苔を見せてもらうことに。
学名を水前寺海苔、商品名に川茸とついているこの海苔は、江戸時代には幕府への献上品とされていた特産品だったとか。以前は熊本にも生息していたけれど、それも絶滅してしまい、今はこちらの筑後のみでしか採取できない貴重な海苔。筑後にはもともと2業者あったそうですが、1社は廃業してしまい、現在は『遠藤金川堂』のみで収穫・生産されているそうなんです。
絶滅危惧種に指定はされているけど「そういう貴重な食べ物ということを、実際に食べて知ってもらわないと保護できないし、継承できない」と語るのは十七代目の遠藤さん。ご苦労がありながらも先代から受け継いでの食文化、地域活性化、伝統産業として繋いでいきながら保護しているんだそう。貴重で大切だからこそ、惜しむことなく広げて育てる、ちゃんと食べて知ってもらう。私たちの仕事にも繋がる部分を感じました。
水前寺海苔は根っこがなくて、転がって育っていく海苔で藍藻類という部類(因みに海で育てる海苔は海藻類)、下流の方が流れが緩やかで海苔が育ちやすく、下流は上流に比べて砂地のようになっており、カモが餌をつついたりした穴に水流の力を利用して海苔が根付いていくそうです。
育った海苔は日焼けをすると色が白くなるので日よけをかけ保護します。1〜8月が収穫時期で2月くらいから初物の海苔の収穫がスタート。自然と海苔が剥がれて流れてくるのを網で待ち受けて収穫。
江戸時代はセキショウ(大分では温泉の香り付に使うとか)という植物を植えて、その葉っぱにひっかかったものをすくって収穫していたそうです。なぜか風情を感じますよね。
収穫した後は、屋内の作業場で生食にするものは塩漬けに、乾燥させるものはそのまますり潰して平たく伸ばして乾燥。一日生乾きさせて剥がし、最後に剥がれやすいようにカーブした板に貼り直します。一枚の板に貼り付ける海苔は、約1.3kg必要。本当に手間暇がかかる作業ですが、板のカーブで乾燥したら浮いてきて勝手に剥がれるという仕組み。昔の人の知恵はやっぱり凄い!
水に戻すと5mmくらいの厚さになるので、料亭で型抜きして汁物に浮かべて使うのが一般的な販路とのこと。
そして、まだ記憶に新しい2017年に筑後で起きた水害では川が増水して大きな被害があり、海苔も大量に流されてしまったそうです。その教訓を元に、2019年に起きた水害では、一旦海苔を川から上げて防災に徹することができたので、被害は少なかったと。自然との共存は、私たちが考える以上に大変。
年に平均5トンの海苔を収穫されるそうですが、実は平成元年のあたりでは20トンくらい採れていた年もあったとか。「気候、水温、降水量などで変化していく自然相手の作業になるので、年によって収穫量が違い全然読めなくて難しいんです…」と遠藤さん。店内では、紙芝居も用意されており、学校給食に出したりと水前寺海苔の歴史などを小中学校へ普及する活動もされています。「食材を通じて自分たちのふるさと自慢ができるように、常日頃から学校や地域とここの水を守っていくことを大事にしています」。
遠藤さんの真摯な言葉に代々受け継がれた思いとこだわり、伝統食文化の希少価値、後世に残すための食育の努力。私たちもひとりでも多くの方に伝えていかなければと強く感じました。
次に向かったのは『ならはら菜園』。福岡店でいつもお世話になっているつくり手です。
まずは応接室でお話を。そこでスッとでてきたのがビーツティー。飲みやすさもあり、しっかりとビーツの旨みのある珍しいお茶でした。ビーツティーにも驚きましたが、ビーツを使ったヴィーガンカレーなども紹介いただき、野菜愛にあふれたお話をたくさん伺うことができました。
そしていよいよ畑を見せてもらえることに。車で少し離れた筑後川沿いに広大な畑が広がっていました。
「化学性肥料を使わず、野菜の味付けは土がする」という楢原さんの名言があります。土づくりを何より大切にされていますが、実際の畑の土はその通り。畑がある場所は、筑後川の氾濫を繰り返した恩恵での砂地の土壌。そのため水捌けがよく、酸素を含みやすい土。見ているだけで力強さを感じます。
そして、その土に合わせ、まずは野菜の品種選びから、遅くゆっくりと育つものを選びます。ゆっくり育つものは細胞がしっかり成長し、葉の分厚いものができて色も濃くなり、根っこのハリも強くなる。寒くなるとハリが強くなった根っこは凍らないように糖度を出すので甘くなる… そういった野菜は味も濃くおいしくなるのだそう。
わさび菜が植えてある畑で「とって食べてみてください」とのことで遠慮なく一枚つかんで折ると、「パキッッ!」ととても力強い音がして一同驚き。そして食べてみるとシャキシャキの歯ごたえと鼻にツンと抜ける辛味がとても爽やか!!味の濃さ、葉のハリがとてもよくわかる体験でした。
そのあとはなんとビーツの収穫体験もさせていただき大きなビーツが取れるたびに大はしゃぎしていたメンバーでした(笑)
その後は久留米市街へ。創業70年以上続く甘納豆専門店『石橋甘納豆』に向かいました。
福岡店でも人気のある甘納豆は、昔ながらの大釜を使用し、季節や気温に合わせて全て手作業でつくられています。完成までに費やす日数は約5〜7日間。豆本来の香りが引き立ち、ふっくらとした食感に。「この奥深い甘さと、豆本来の風味!やばい…」
甘納豆といえば、金時豆や小豆、えんどう豆が浮かびますが、こちらでは栗やサツマイモ、トンカ豆にきな粉やピーナッツを合わせるなど、新しい素材を伝統製法でおいしく仕上げています。味はもちろんのこと、見た目も可愛らしくちょっとしたお土産にと老若男女たのしめる逸品。シェフもお店のスタッフへ大量買いやっちゃいました。
今回もそうですが、筑後地方へ視察に行くたびに、広大な平野と筑後川の恵みを受けているこの地域、知れば知るほど魅力が深まっていき、おいしい食材や地域のみなさまとの繋がりなどを身近に感じられて、改めて素敵な場所だと気づかされます。さて、つくり手の思いを受け取って、おいしいメニューに仕上げなきゃですね、シェフ!
2月のプロモーション「ちっごの恵み」では、今回訪問したつくり手のこだわりはもちろん、コラボレーションメニューやつくり手の技術が詰まった加工品が店内に集結しますので、ぜひたのしみにしていてください!
そして、そんな魅力たっぷりの筑後の新鮮な旬が天神チカに集まる「CHIKUGO Marche d'hiver」の開催が決定しました!こだわりを持っておいしい食をつくり続けているちっごのつくり手にぜひ会いに来てください。
「CHIKUGO Marche d'hiver」
開催日時:1月24日(土)、25日(日) 各日11:00-17:00
開催店舗:DEAN & DELUCA福岡店
出展予定アーティザン : KAWAKATSU FARM(久留米)/ 根菜人(久留米)/ 高木茶園(八女)/ ならはら菜園(久留米)/ 久保山農園(朝倉)/ 川辺農園(小郡)24日のみ出展 / いのうえファーム(みやま)25日のみ出展 / MARUKO FARM(久留米)25日のみ出展

